ウリパパの日記

2007年からgooブログを始め、2025/4/27にはてなブログへ移行しました。平日は茨城県単身赴任中のため茨城県ネタが多いです。

新国立劇場「リゴレット」公演 2026.2.21

今日、新国立劇場でヴェルディのリゴレットを聴いてきました。リゴレットはイタリアオペラの中で一番のお気に入りで、2年前の英国ロイヤルオペラの来日公演以来2年ぶり、そして今日で7回目の経験となります。ワーグナーのワルキューレと並んで、今まで一番数多く聞いたオペラかもしれません。リゴレットは愛と呪いの復讐劇。ヴェルディの典型的な悲劇オペラです。数々の美しい旋律で彩られたアリアが挿入され、重唱も多く、心理描写が音楽で表現されてオペラ全体が盛り上げられていきます。どのアリアの旋律も決して脳裏から離れることがありません。道化師リゴレット、純真な娘のジルダ、そしてマントヴァ公爵を中心に展開する、愛と復讐そして呪いの壮絶なドラマ。いつもこのオペラを見ると、美しいアリアの旋律が頭の中をぐるぐる駆け巡り、3幕幕切れの

Gilda! mia Gilda!… è morta! ジルダ、ジルダ、お前は!
Ah, la maledizione!  ああ呪いだ!

衝撃の幕切れには、涙を誘われるのです。

 

 

今回の公演のプログラムと配役表です。2幕と3幕の間には休憩が無く続けて演奏されます。2年前のロイヤルオペラ公演でも同じでした。

【指 揮】ダニエレ・カッレガーリ
【演 出】エミリオ・サージ

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

【リゴレット】ウラディーミル・ストヤノフ
【ジルダ】中村恵理
【マントヴァ公爵】ローレンス・ブラウンリー
【スパラフチーレ】斉木健詞
【マッダレーナ】清水華澄
【モンテローネ伯爵】友清 崇

演出はスペインのエミリオ・サージ。2023年に新制作上演された舞台。伝統的な衣装でオーソドックスな演出でした。シンプルな照明が効果的に使われたやや暗めの舞台、重苦しいドラマを引き立てた東京交響楽団の緻密で美しいハーモニー、それに応えた色彩豊かな歌唱、舞台全体が指揮者のダニエレ・カッレガーリさんを中心にワンチームとしてまとまっていた印象です。声の競演で紡ぐ愛との呪いの復讐劇のイメージが強いリゴレットですが、カッレガーリさんの音楽はオーケストラと歌声が融合していて、とても新鮮でした。特に弱音のコントロールが素晴らしいように感じました。座席は前方11列目の向かってやや右側のベストポジション。場面転換の様子が全て見えてしまいました(笑)。しかし暗めの照明のため、歌手の表情はおぼろげにしか確認できませんでした。

今回のプロダクションは、迫力ある歌声を競い合うイタリアオペラに酔うというよりは、アンサンブルを重視した音楽劇が魅力のように感じました。今では一般的に演じられるアリアの最後に1オクターブ高い高音で締めくくるパフォーマンスは全てカット。原典に従った演奏だったようです。ただし、3幕最後に身代わりになったジルダが刺された後に舞台裏からマントヴァ公爵が歌う女心の歌の最後はHが聞こえてきました。

リゴレット、ジルダ、マントヴァ公爵の主役は、全幕を通して安定した歌唱で、この音楽劇をきっちり支えていました。特に、2幕、3幕の最後で演じられるリゴレットとジルダの二重唱の素晴らしさに心動かされました。

リゴレットを演じたウラディーミル・ストヤノフさんは初めて聴きました。世界最高のバリトンの一人らしく、声の力と表現力、迫力の演技共にこれぞ主役という活躍に圧倒されました。輝かしく艶のある声が魅力で、痺れまくりました。

ジルダを演じた中村恵理さん。同じく初めてです。実は今回のリゴレットの目的は一度生で聞いてみたいと思っていた中村恵理さんでした。期待通りの熱演で、特に意識的に抑制された弱音の美しさと響きで純情なジルダを演じていました。天使のような歌声に鳥肌立ちましたね。とても強い声を持っている方なので、こんな歌い方もできるのかと驚きました。これから世界に羽ばたいていってほしいですね。

マントヴァ公爵を演じたローレンス・ブラウンリーさんは、実は以前(2006年)にセビリアの理髪師のアルマヴィーヴァ伯爵で聞いたことがあります。今ではベルカント・オペラの国際的スターと評されているそうです。ヴェルディでも端正な歌唱で、美声と高音の魅力を堪能しました。

スパラフチーレの斉木健詞さん、マッダレーナの清水華澄さんは3幕を引き締めていましたね。日本人キャストでもここまで自然体な演技ができるのには驚きました。

 

 

華やかなエントランス

 

休憩中の様子

14時に開演、30分の休憩を1回はさみ、16時40分に幕が降りました。いつもとちょっと異なる感動的なリゴレットに満足でした。

ウイーン国立歌劇場来日公演「ばらの騎士」2025.10.26

今日は上野の東京文化会館でウイーン国立歌劇場来日公演「ばらの騎士」を見てきました。海外の歌劇場の引っ越し公演を観るのは、昨年6月の英国ロイヤルオペラ「リゴレット」以来1年半ぶりです。ウィーン国立歌劇場の日本引っ越し公演は今回で10回目となるそうです。しばらく観ていないなと思い記録を調べてみたところ、前回は2016年のワルキューレ(アダム・フィッシャー指揮)、その前はクライバー来日で話題となった1994年にアバド指揮のフィガロの結婚、さらに遡ると1989年のパルシファル(ホルライザ指揮)を聴いていました。全盛期のルネコロが歌ったパルシファルの神聖な舞台神聖祝典劇に衝撃を受けたことを今でも思い出します。

 

2021年に予定されていたウイーン国立歌劇場来日公演はコロナ禍によって中止となり、ようやく今回の来日公演となりました。東京文化会館は2026以降3年間にわたり改修のため休館となるため、今後しばらくは本格的な来日公演を経験できそうにありません。しかも、今回のばらの騎士は、予約電話が通じずチケットをゲットできなかった1994年公演と同じ舞台(オットー・シェンク演出)とのこと。これは行くしかありませんね。いつものように義弟の医歯協経由で最終公演となる昨日のS席チケットを購入しました。

 

14時開演の40分前に入場。チケット完売で、久しぶりに見る  ”大入” です。

館内の様子です

 

無料の公演パンフレットと共にパチリ

 

キャストは以下の通りでした。
 作曲:R. シュトラウス
 指揮:フィリップ・ジョルダン
 演出:オットー・シェンク
 配役:
  元帥夫人(マルシャリン):カミラ・ニールンド
  オックス男爵:ピーター・ローズ
  オクタヴィアン:サマンサ・ハンキー
  ゾフィー:カタリナ・コンラディ
  ファーニナル:アドリアン・エレート
  マイアンネ:レギーネ・ハングラー
  ヴァルザッキ:トーマス・エベンシュタイン
  アンニーナ:ステファニー・メイトランド他

14時に開演し、幕が降りたのは18時20分。超一流のオペラを聞いた満足感で満たされています。今年夏まで本歌劇場の芸術監督を務めていたフィリップ・ジョルダンの奏でるR.シュトラウスは歯切れがよい印象でとても新鮮です。ウイーン国立歌劇場管弦楽団が奏でる音楽は18世紀のウイーンにタイムスリップしたかのような感覚。1968年の初演以来定番となったオットー・シェンクの演出はホーフマンスタールの世界観を忠実に再現し、読み替え演出は一切ありません。これぞ贅沢な総合芸術!というオペラを楽しませてもらいました。

歌手も皆さん素晴らしかったですね。元帥夫人のカミラ・ニールンドさんは気品があり、心の嘆きを見事に歌いあげ、一方オックス男爵の前では威圧感を感じました。声量を意識的に抑えた繊細な表現は、オーケストラの美しい音色との相乗効果により見事なハーモニーとなって心を打ちました。

オックス男爵のピーター・ローズさんは役者ですね。存在感あってユーモア誘う演技、下品にはならず貫禄の歌唱で舞台を仕切っていました。二幕、三幕とオックス男爵お気に入りのウィーンのワルツ、それを支えるウィーン国立歌劇場管弦楽団のアンサンブルの素晴らしさに涙を誘われます。三幕のドタバタの去り際には、”帰りましょう”と日本語のセリフが飛び出し、笑いを誘っていました。

主役のオクタビアンを歌ったサマンサ・ハンキーさんは17歳の騎士らしく若々しく、よく通る声。マリアンデルとしての演技も見事で、一幕、三幕のオックス男爵との掛け合いは笑いを誘いました

ゾフィーを歌ったカタリナ・コンラディさんは天使のような美声で声がよく通ります。その歌唱はとても印象に残りました。

第1幕の元帥夫人の心を打つ歌唱、第2幕のオクタヴィアンとゾフィーの二重唱、オックス男爵の存在感とウイーンワルツ、第3幕の元帥夫人、オクタヴィアン、ゾフィーによる三重唱とそれに続く二重唱の素晴らしさは劇場空間をともに体験した聴衆にしか味わえない至福のひと時でした。

 

幕間のロビーの様子です

 

今回の公演は千秋楽でした。最後にNBSの公式Xからの写真を引用しておきます。

 

ネイディーン・シエラのサイン入り公演プログラムが当たった 2024.7.19


先週の土曜日、NBS(日本舞台芸術振興会)から、ゆうパックが届きました。先日観劇した英国ロイヤルオペラのサイン入り公演プログラムです。昨年ローマ歌劇場公演でソニア・ヨンチェヴァさんのサイン入りプログラムをゲットしたので、今回も少し期待していたのです。誰のサインがもらえたのかなとワクワクしながらポストイットのページを開くと、何とリゴレットのジルダを歌ったネイディーン・シエラさんでした。大感激ですね。

6月28日にNHKホールでリゴレットを聴いてきました。その時の感想を読むと、「前評判通り、伸びのある美声と表情豊かなコロラトゥーラソプラノですね。声に芯があるので微弱音の響きも良く、まるで天使のような歌声にしびれてしまいました(笑)」

公演の様子は  ↓  を参照ください。

英国ロイヤルオペラ「リゴレット」日本公演 2024.6.28

英国ロイヤルオペラ「リゴレット」日本公演 2024.6.28


昨日はアントニオ・パッパーノ率いるロイヤルオペラの来日公演をNHKホールで聴いてきました。ヴェルディリゴレットです。オペラの魅力に取りつかれて40年以上になりますが、実はロイヤルオペラの来日公演を聴いたのは今回が初めてかもしれません。2002年に音楽監督に就任して20年が経過したパッパーノは今シーズン限りで退任します (7/1 引退→退任に誤記訂正)。日本でパッパーノのオペラを聴く最後のチャンスとなった今回は、リゴレットとトーランドットという魅力的なオペラ上演。どちらを選択するか悩んだ挙句、音楽的により魅力的なリゴレットに決めました。NBSのHPにパッパーノのメッセージが寄せられていました。「これらの作品は、絶対の自信を持って!この音楽の力と舞台の魅力を日本のファンへの最後の贈り物にしたい。」

リゴレットの公演は神奈川県民ホールで2回、その後NHKホールで2回行われます。NHKホールはオペラ向きではないので、できれば神奈川県民ホールで聴きたったのですが日程の都合がつかず、NHKホールの初日に会社を休んで出かけてきました。

 

久しぶりに訪れるNHKホール。前回訪れたのは7年前のバイエルン国立歌劇場の来日公演タンホイザ(ペトレンコ指揮、フォークトがタンホイザーを歌った話題の公演)以来です。公演会場が3か所に分散したこともあってか、オペラ公演前の華やかさが全く感じられません。会場の雰囲気的にはトーランドットの全4回の公演が行われる東京文化会館のほうが良かったのかもしれません。

 

配役表です。2幕と3幕の間には休憩が無く、続けて演奏されるようです。

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:オリヴァー・ミアーズ
マントヴァ公爵:ハヴィエル・カマレナ
リゴレット:エティエンヌ・デュピュイ
ジルダ:ネイディーン・シエラ
スパラフチーレ:アレクサンデル・コペツィ
マッダレーナ:アンヌ・マリー・スタンリー
モンテローネ伯爵:エリック・グリーン
ジョヴァンナ:ヴィーナ・アカマ=マキア
マルッロ:ヨーゼフ・ジョンミン・アン
ロイヤル・オペラ合唱団
ロイヤル・オペラハウス管弦楽団

 

今回の公演は1階右側の後方で鑑賞。舞台がほぼ目の高さに見え、歌手の声も直接届く場所でした。多少値が張っても巨大なNHKホールで開催されるオペラは1階で聞かないと魅力半減なので、義弟の医歯会経由でチケットを購入しました。

さて、期待のリゴレット。劇と音楽が見事に融合して、ヴェルディの魅力に満ち溢れていました。演出は照明効果が素晴らしく、明と暗を際立たせていました。さすが演劇の本場、イギリスの歌劇場です。性的表現で一部過激な部分もあって本国ロンドンでは12歳以上の制約が課せられているそうです。3幕のマッダレーナも露骨さはなく抑制された演出でした。

冒頭に現れたカラヴァッジョの「聖マタイの殉教」をモチーフにした人間ピラミッドの演出には驚きました。そしてマントヴァ公爵の館に掲げられたティッツァーノのウルビーノのヴィーナス(公演パンフレット通りの巨大な裸体画)が後半では中空に浮くジルダの寝室に変わります。最後はここに梯子をかけてジルダが拐われてしまい、幕切れでは父親のリゴレットがその高い梯子を登り、寝室に残されたヴィーナスと同じポーズのグロテスクな人形を見て初めて騙されたことを知ってモンテローネの呪いを思い出すといった流れ。さらに2幕の公爵の館では再ウルビーノのヴィーナスに戻り、3幕ではスパラフチーレの寝室となって公爵とマッダレーナと公爵の情事の場へ。幕切れでは2階そのものが舞台から去り、背後に大きな川が流れて悲しい幕切れとなるというシンプルな舞台でした。

公爵の館の宮廷人は、皆さん衣装が異なり、伝統的な衣装やモダンな衣装が入り乱れていました。舞台上の登場人物ひとりひとりの動作も細部までよく練られていて、中には滑稽な動作もあり、さすが演劇の国のオペラハウスです。よく見るとネクタイを付けてスーツ着ている人も。でも照明と衣装がマッチして、ちぐはぐさを感じません。色の調和が素晴らしく無時代演出を自然体で楽しむことができました。モンテローネ伯爵がずっとスーツとネクタイ姿というのに違和感を感じましたが、自己犠牲を決意して嵐の中スパラフチーレの館に飛び込んだジルダも最後はスーツ姿だったというのも何か演出家の意図があったのでしょうか。3幕の最後でリゴレットが死体の入った袋のファスナーを開けて中を確認するときも、うーん当時はファスナーなどなくて紐が結ばれていたはず。。と思いながら見てしまいました。演出そのものはグロテスクで、相当残忍でしたね。モンテローネの眼をつぶす公爵など見ていて恐ろしくなってしまいました。

この悲劇的な音楽劇を音楽で支えたのはパッパーノ率いるロイヤル・オペラハウス管弦楽団。とにかく躍動感とキレがありました。

歌手ではリゴレットを演じたエティエンヌ・デュピュイさん。豊かな声量と端正で艶やかな声。冒頭から幕切れの叫び(Ah! la maledizione!)まで圧倒的な存在感でした。容姿にも恵まれてかなり若そうですね。リゴレットと言えば、30年近く前のボローニャ歌劇場の初来日公演で、円熟を迎えたレオ・ヌッチさんの復讐感みなぎる凄みに衝撃を受けたことを今でも鮮明に思い出します。デュピュイさんも経験を積んで個性的な役作りに磨きをかけていけば、超一流歌手として今後世界で活躍できるのではないかなと感じました。

そしてジルダを歌ったネイディーン・シエラさん。前評判通り、伸びのある美声と表情豊かなコロラトゥーラソプラノですね。声に芯があるので微弱音の響きも良く、まるで天使のような歌声にしびれてしまいました(笑)。

リゴレットとジルダのの親子の二重唱はどれも素晴らしく、特に2幕のアリア「悪魔め、鬼め」からリゴレットが公爵への復讐を誓う幕切れまでの盛り上がりは、オケが一体となった高揚感が最高でした。

マントヴァ公爵のハヴィエル・カマレナさんは伸びのある美声。尻上がりに調子が出てきて、3幕の女心の歌は決めてくれました。

スパラフチーレのアレクサンデル・コペツィさん、マッダレーナのアンヌ・マリー・スタンリーさん、モンテローネ伯爵のエリック・グリーンさんともに適役で舞台を引き締めていました。全体的に若い歌手が多い印象で、躍動感と生命観あふれるオペラを楽しむことができました。

 

昨日の開演は18時30分。ホールで軽食を購入できるかもしれませんが、幕間が1回しかないため、事前にコンビニで食事を購入して開演1時間前にNHKホールへ向かいました。驚いたことに、コロナ渦以降もNHKホールではロビーでの食事が一切禁止となっていて、軽食の販売もありません。ということで、雨も小やみになったので外出券をもらってホールの外に出て、食事をすることにしました。チケットと共に記念撮影(笑)。気になるお客さんの入りは、平日夜の公演ということもあってか空席が目立ちました。一方、神奈川県民ホールの初日(土曜日)は大入りが出たそうです。大昔のバブル期のオペラ来日公演はチケットをとるのが非常に難しく、発売から1時間で売り切れてしまうこともしばしばありました。あの当時に比べてチケット代は2倍程度で、今回のように充実した舞台芸術を日本にいながら堪能できるのは嬉しいですね。しかし、NHKホール、東京文化会館神奈川県民ホールともに老朽化に直面し、再びの改修工事に数年かかることを考えると、将来大規模なオペラの引っ越し公演を行える劇場がネックとなることが懸念されます。来年東京文化会館でウイーン国立歌劇場の来日公演が発表され一安心です。

 

新国立劇場 トリスタンとイゾルデ 2024.3.29


今日の午後、休暇を取得して新国立劇場トリスタンとイゾルデを聴いてきました。今回のプロダクションは計6回、その最終日となります。14時開演、2回の幕間休憩(各45分)を含め5時間30分。幕が降りたのは19時40分。ワーグナーのオペラは本当に長いです。ニュルンベルクのマイスタージンガーに匹敵する長丁場です。

そのため、トリスタンとイゾルデはあまり聞く機会が無く、記憶が正しければ今回で3回目となります。前回は2007年のベルリン国立歌劇場来日公演、バレンボイム指揮、ワルトラウト・マイヤーのイゾルデでした。全ての聴衆が劇場の中で媚薬を飲まされて愛に陶酔した不思議な経験が蘇ってきます。その前は2000年、病み上がりのアバドベルリンフィル率いて日本で開催したザルツブルクイースター祭の公演、デボラ・ポラスキがイゾルデを演じ、初めて聞くこのオペラの魔力に衝撃を受けた記憶があります。

 

今回の公演は期待の歌手が揃っていたのですが、直前になって主役2人が交代となり、どうなることかと心配しました。しかも最終公演で疲労困憊なのではないか。ところが、その不安を払拭するような出来栄えに満足でした。立役者は大野和士さんと東京都交響楽団でした。ピンチヒッターの主役2人を迎えて、ここまで公演の完成度を高めて頂いたことに感謝ですね。今まで新国立のワーグナーでは東京都交響楽団が演奏することが多く、何となく控えめで不完全燃焼気味だったのですが、今回は違います。弦楽器の音色の素晴らしさ、管楽器のソロも涙を誘う美しさ。緻密な音楽づくりとやや抑制の効いた音楽のうねりが、粒揃いの歌手達を盛り立てました。

 

本日のオペラのキャストです。

【指 揮】大野和士
【演 出】デイヴィッド・マクヴィカー
【合 唱】新国立劇場合唱団
管弦楽東京都交響楽団

【トリスタン】ゾルターン・ニャリ
【マルケ王】ヴィルヘルム・シュヴィングハマー
【イゾルデ】リエネ・キンチャ
【クルヴェナール】エギルス・シリンス
【メロート】秋谷直之
【ブランゲーネ】藤村実穂子
【牧童】青地英幸
【舵取り】駒田敏章
【若い船乗りの声】村上公太

 

とてもフレッシュなトリスタンとイゾルデでした。主役二人とも若々しく、国王マルケも役作りは老けていても声が若々しい。クルヴェナールとブランゲーネがしっかりと主役を支えていました。

トリスタン役のゾルターン・ニャリさんは声量たっぷりで抒情的な歌声です。演劇の学位を取得して俳優として活躍。オペレッタを経由してオペラへと異色のキャリアを持ちます。そのためか演技力が抜群ですね。容姿も素敵です。ヘルデン・テノールとは異なるキャラですが、見事に代役を果たしたと思います。

ゾルデ役のリエネ・キンチャさんはドラマティックな声質ではありません。でも声量があり1幕からパワー全開。こんなに飛ばして大丈夫?と思いました。でも3幕のイゾルデの死は聞かせてくれました。イゾルデは広い音域を要求される役ですね。どの音域もよく声が届いてきました。キンチャさんは2019年のタンホイザーエリザベートを歌っていたのですが、あまり記憶に残っていなかったのです。今日は記憶に残るイゾルデでした。

国王マルケ役のヴィルヘルム・シュヴィングハマーさんは、若々しく伸び伸びと美声を響かせていました。ブランゲーネ役はお馴染みの藤村実穂子さん。実は藤村さんを聴くのは初めてかもしれません。貫録の演技と迫力の歌声は圧巻。さすが世界で活躍するだけあります。クルヴェナール役のエギルス・シリンスさんも、3幕でのトリスタンとのやりとりではいい味を出していました。

今日は1階10列のほぼ中央の座席でした。舞台が目の高さに見え、歌手の声が正面から響いてきます。舞台の演出はシンプルで、1幕と3幕では巨大な太陽が動きます。2幕はプラネタリウムのような夜の光と炎が印象的でした。1幕の冒頭で白い太陽(満月?)が昇ってきたとき、下の部分が床に反射して?ダルマ太陽のように見えてしまいました(笑)。3幕の最後は青と赤のコントラストが美しく、イゾルデが舞台の奥に消えていくと同時に太陽もゆっくりと沈んでいきました。岩場の先に沈むためダルマ夕日にはなりませんでした(笑)。今日は舞台演出が静かなのでワーグナーの音楽に没頭できましたね。唯一理解できなかった演出は、上半身裸のマッチョなダンサー達。コミカルな動きもありました。演じる皆さんには気の毒ですが、ちょっと目障りでしたね。

ゾルデの愛の死が終わり、余韻たっぷりの中、幕が降りました。最終日ということもあってか、カーテンコールは鳴りやまない拍手。延々と続きました。

次回は6月のロイヤルオペラのリゴレット。こちらも楽しみです。

 

幕間の休憩は45分。外に出て天気が回復した空を見上げます。羽田空港へ向かう飛行機が2~3分置きに上空を通過します。

 

コンデジでズーム。ANAです。

 

2幕終了後の休憩時間にも外に出ます

 

空を見上げます

 

JALです。機体にキャラクタが描かれています。

 

続いてやってきたANAポケモンジェット?  焦点が合いませんでした

 

次はJAL。際限がないので終わりにします。

 

新国立劇場シモン・ボッカネグラ公演 2023.11.18


昨日は新国立劇場で「シモン・ボッカネグラ」を聴いてきました。ヴェルディシモン・ボッカネグラ新国立劇場初登場だそうです。ヴェルディの中でも極めつけの渋いこのオペラは30年前に藤原歌劇団の公演で一度しか見たことがありません。奥さんも一緒だったかな。確かレナート・ブルゾンがタイトルロールを歌ったのですが、あまり記憶に残っていません。むしろミラノスカラ座が日本に初来日した1981年の公演(アバド指揮、カップッチルリ、ギャウロフ、フレー二出演)が今でも強烈な印象として残っています。初日の公演がこのオペラで、FMラジオで生中継されたり、抜粋版や全曲版がNHKテレビで放映されました。スカラ座の公演がその後オペラの魅力にはまってしまう契機となったのでした。

今回の新国立劇場の公演、15日の初日には天皇陛下がご鑑賞になったとマスコミで報道されていました。陛下がオペラを鑑賞するのは即位以来初めてだそうです。鑑賞後、陛下は指揮者の大野和士さんや歌手らと懇談し「すばらしかったです」と感想を述べられたということです。これは期待できますね。14世紀に実在したジェノヴァ共和国の総督シモン・ボッカネグラが主人公です。政治的背景や人間関係が複雑に入り組むストーリーなので事前の予習は欠かせません。

今回の公演のキャストは以下の通りです。

【指 揮】大野和士
【演 出】ピエール・オーディ

シモン・ボッカネグラ】ロベルト・フロンターリ
【アメーリア(マリア・ボッカネグラ)】イリーナ・ルング
【ヤコポ・フィエスコ】リッカルド・ザネッラート
【ガブリエーレ・アドルノ】ルチアーノ・ガンチ
【パオロ・アルビアーニ】シモーネ・アルベルギーニ
【ピエトロ】須藤慎吾
【隊長】村上敏明
【侍女】鈴木涼子

 

 

現代オペラ界屈指の演出家ピエール・オーディさんが演出にあたり、国際的に評価の高い現代アーティストであるアニッシュ・カプーアさんと舞台芸術でコラボレーション。世界中のアートファンからも注目の公演と注目されていました。ポスターで表現される赤と黒に支配された抽象的で象徴的な美術表現。この演出に耐えうるヴェルディーのオペラを一つ挙げるとすれば「シモン・ボッカネグラ」をおいて他にないと語る記事が公演パンフレットに掲載されていました。プロローグでは赤と黒の三角の帆が港の様子を表現。シモンが総督に選ばれる歓喜の場面では白と赤のジェノヴァの国旗が演出されました。本編に入ると赤と黒の世界が続きます。美術のカプーアさんは、孤独と死が付きまとうシモンの人生を、エトナ山の近く住み、最後には火口に身投げした古代ギリシャの哲学者であるエンペドクレスの人生に重ね合わせました。下向きに吊らされた逆さまの火山が上から迫り、その下に赤い舞台が照らされ苦悩と愛憎の物語が進行します。3幕では、エトナ山の火口から噴出した溶岩が一面に広がり、溶岩の衣装をまとったシモンが毒を盛られてふらふらの状態で起き上がった演出には驚きました。シモンがブリエーレを後継に指名して息途絶えた後には、黒い太陽が昇り幕が降りました。

今回の公演は、音楽的にもかなりハイレベルだったと思います。大野和士指揮の東京フィルハーモニー交響楽団はとても重厚でなヴェルディの音楽を緻密な表現でしっかり支えていました。新国立合唱団はいつもながらの素晴らしさ。ソリストの皆さんも役柄にはまり、緊張感に満ちた人間ドラマを演じていました。シモンを歌ったフロンターリさんは役者ですね。65歳とは思えない美声と声量で、総督として、父親としての心理描写が素晴らしかったです。フロンターリさんは、30年くらい前にフィレンツェ歌劇場の来日公演でルチアのエルガルド役で一度聞いたことがあります(ルチアはグルヴェローバ)。ベルカントからシモンのような重い役まで演じることができる貴重なバリトンですね。まだまだ現役でがんばってほしいです。ガブリエーレを歌ったガンチさんは、うっとりするような輝かしい声で魅了。紅一点のイリーナ・ルングさんは音域が広く、純潔なアメーリアを演じていました。フィエスコのザネッラートさん、パオロのアルベルギーニさんも役にはまり、まさにイタリアオペラの声の饗宴を楽しむことができました。

幕が降りた後のカーテンコールは大きな拍手に包まれ、何度も出演者が舞台上で挨拶を繰り返していました。

今年のオペラ鑑賞は本公演で終了。音楽会は年末に姪が出場するメサイアの公演があります。来年もどのような公演に巡り合えるか楽しみです。

サイン入り公演パンフレットが当たった 2023.9.29


昨日、NBS(日本舞台芸術振興会)から自宅にゆうパックが届きました。何かなと思い開けてみると、先日観劇したローマ歌劇場日本公演のプログラムが入ってました。トスカの公演時に引換券と交換してきなので2セットも不要。不思議だなと思って調べてみると、出演者のサインプレゼントが抽選の結果当たったそうです。どれどれ、どこにサインがあるのかな?とオレンジ色のポストイットが付いたページを開いてみました。何と主役のトスカを歌ったソニア・ヨンチェヴァさんのサインです。嬉しいですね。

9月21日に東京文化会館で聞いたトスカの公演。歌姫トスカを歌ったソニア・ヨンチェヴァさんは、素晴らしい歌唱と演技で聴衆を魅了しました。サインが頂けて大感激です。

(参考)9月21日東京文化会館でのローマ歌劇場「トスカ」の公演

ローマ歌劇場日本公演 プッチーニ「トスカ」 2023.9.21


昨日は、久しぶりに海外オペラの来日公演に行ってきました。ローマ歌劇場公演のプッチーニ「トスカ」です。プッチーニのオペラの中ではトーランドットと並んで好きな演目です。しかし生の公演を見る機会が少なく今回が3回目。前回は2000年の新国立劇場公演なので23年ぶりとなります。しかも、今回のローマ歌劇場は初めての経験です。

ローマ歌劇場1880年に完成した「コスタンツィ劇場」が前身であり、1900年にはローマを舞台にしたプッチーニのトスカが初演されました。その後1928年に王立歌劇場、1946年にローマ歌劇場と改称されています。もともと、ミラノスカラ座ボローニャ歌劇場などの北イタリアのオペラハウスに比べて格下というイメージがありましたが、リッカルド・ムーティーがこの劇場を世界レベルの水準へ引き上げました。2014年に、そのムーティーが財政難や労働組合対応を理由に辞任してから、劇場解体の危機に直面したことはよく知られていますが、この困難な状況を乗り越え、2019年にダニエレ・ガッティー音楽監督に就任、2022年からは今回指揮したミケーレ・マリオッティへ引き継がれ、コロナ渦を乗り越えた新たな時代におけるオペラハウスの実現にチャレンジしているとのことです。

今年はローマ歌劇場の他にも11月にボローニャ歌劇場も来日して同じトスカを上演します。どちらを聴きにいこうか悩みましたが、ローマ歌劇場により魅力を感じたのでチケットを購入しました。ローマを舞台としてローマで初演されたこのオペラはローマ歌劇場にとって特別な意味を持っているのです。その価値が十分ありました。プッチーニの情熱的な音楽、圧倒的な声の力による演技、そして迫真の舞台に酔いしれてきました。まさにイタリア。ローマが日本にやってきて音楽でローマを体験できると思えば S席59000円のチケット代など安いものです。

事前勉強はこれくらいにして、昨日は午後休暇を取得して上野へ向かいました。期待に胸が膨らむ中、開演40分前に東京文化会館へ到着。

 

今回のローマ歌劇場公演は、椿姫とトスカの2演目です。椿姫は公演を終え、トスカは2日目(東京文化会館の初日)でした。

 

配役表です。

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ
トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ
スカルピア:ロマン・ブルデンコ

管弦楽ローマ歌劇場管弦楽団
合唱:ローマ歌劇場合唱団

 

フィレンツェ出身の演出家ゼッフィレッリは2008年にローマ歌劇場のためにこの『トスカ』をつくりました。今年はゼッフィレッリ生誕100年に当たります。昭和の時代に見られた王道の演出でしたね。ゼッフィレッリの記事が掲載されていたので、HPから引用しておきます。

荘厳な教会、重厚な内装の警視総監室、そして聖アンジェロ城での緊迫のフィナーレ。その根底にあるのは「演出家には作曲家から託された物語を伝える義務がある」というゼッフィレッリの信念。サラ・ベルナール演じる芝居 を見て、このオペラを書きたいと熱望したプッチーニの想いや描きたかった歌姫トスカのドラマが、ゼッフィレッリの演出と舞台美術によって、迫真の舞台となって繰り広げられます。まさに「神は細部に宿る」と言えます。(引用終わり)

 

座席は1階14列の中央から少し左寄り。豪華絢爛な舞台を少し見上げるような感じです。歌手の声は正面から響いてきます。平日マチネにもかかわらず会場は多くのオペラファンで埋め尽くされていました。ほぼ満席です。昔に比べると若い方が多くなった印象です。自分が歳とったからかな(笑)。海外オペラハウスの来日公演でよく姿を拝見する元総理大臣(第87代-89代)もお見えになっていたようです (^^♪

プッチーニのオペラ、久しぶりに聴きました。トスカは劇的でドラマティックな音楽の中に、歌と身体で感情を表現するヴェリズモっぽさもあって、とても気に入っているのです。ミケーレ・マリオッティさん指揮するローマ歌劇場管弦楽団・合唱団の皆さんは、プッチーニの甘くて流麗な旋律を支え、また主人公が4人とも死んでしまう悲劇の音楽を演出していましたね。この自然で流れるようなオーケストレーションは日本のオペラハウスでは味わえないですね。やはり本場のオペラハウスです。

主役のカヴァラドッシ、トスカ、スカルピアは、皆さん素晴らしかったです。画家のカヴァラドッシを歌ったヴィットリオ・グリゴーロさん、初めて聞きました。文句なしの美声です。声で演技するタイプで声量も桁違い。役柄にピッタリのイタリアンテノールです。こんなすごいスーパーテノールを旬の時期に聞けて幸せでした。冒頭のアリア「妙なる調和」からパワー全開。3幕の告別の歌「星は光りぬ」は感動です。カーテンコールでは声を出せないので、体を張って鳴りやまぬ拍手に応えていました。

歌姫トスカのソニア・ヨンチェヴァさんも負けてはいません。歌唱力、演技力が卓越していました。1幕では嫉妬深い女を演じ、2幕のファルネーゼ宮でのスカルピアとの絡みの場面は特に脳裏に焼き付いています。「歌に生き、恋に生き」の涙を誘う熱唱、スカルピア刺殺の場面では恐ろしいばかりの復讐心を露わにしていました。そして3幕の処刑場で万事休すとなりサンタンジェロ城の城壁から身を投じる場面まで、悲劇の歌姫、ヒロインを見事に演じました。声量面でもカヴァラドッシと互角にわたりあい、躍動感あふれる音楽を感動に導いてくれました。

王党派の警視総監スカルピアを演じたロマン・ブルデンコさんは美声で演技力抜群。今まで見たビデオでは悪のオーラが漂う癖の強いバス歌手が演じることが多かった印象ですが、上品でスタイリッシュ?なスカルピアでした。容姿からそのような印象をうけてしまったのかもしれません。でも2幕でトスカに執拗に迫る場面は、邪悪さと声の力でトスカを圧倒していました。

このオペラ、主役は3人とも舞台上で死んでしまいます。刺殺(スカルピア)、銃殺(カヴァラドッシ)、飛び降り自殺(トスカ)。アンジェロッティも舞台上ではありませんが自殺。この救いようのない悲劇はトスカの投身と、星は光りぬの旋律で幕を降ろしました。その後、聴衆の皆さんは現実の世界に戻り、万雷の拍手となりました。

 

最後に東京文化会館の開演前のロビーの様子を紹介しておきます。久しぶりの海外オペラハウスの来日公演。贅沢なひと時を過ごすことができました。

 

 

 

海外オペラハウスの来日公演は6年ぶりでした。前回は2017年のバイエルン国立歌劇場ワーグナー。ペトレンコ指揮のタンホイザーでクラウス・フロリアン・フォークトさんの圧倒的な歌唱が思い出されます。コロナ渦も収束したので、今後は1年に1回は海外オペラハウスの来日公演を楽しみたいですね。次回は11月の新国立劇場ヴェルディシモン・ボッカネグラです。同じイタリアものですがトスカと違って渋めです。

 

最後は上野駅から見あげる東京スカイツリー

新国立劇場「アイーダ」 2023.4.8


今日は新国立劇場公演のヴェルディアイーダを見に行ってきました。本公演は新国立劇場開場25周年を記念し、1998年の開場記念公演として制作されたゼッフィレッリ演出舞台の5回目の再演となっています。

期待通り豪華絢爛な舞台、新国立劇場の舞台をフル活用した大スペクタクルを堪能してきました。1998年の公演はチケットが取れず、その後の再演も見ていないので、今回は期待に胸が膨らみます。令和の時代には馴染まないのかもしれませんが、昭和の時代に恒例となっていた海外歌劇場の引っ越し公演を思い出してしまいました。ゼッフィレッリ演出といえば、ミラノスカラ座の2回目の来日公演(1988年のNHKホール)でのトゥーランドットマゼール指揮、ディミトローヴァ、マルティヌッチ出演)のきらびやかな舞台が思い出されます。

 

本日の公演スケジュールです。ワーグナーと違って1幕の公演時間が短いので、何となく気楽に聴ける印象。今回のアイーダ公演の主なキャストは以下の通りです。

 

14時開演、土曜日ということもあって満席です。マスク着用も不要となりコロナ前の世界が戻ってきました。それでも半数の観客がマスクを着けていた印象です。舞台上の2幕の凱旋シーンではエキストラも含めて100名以上は舞台に出場、超密状態です。しかも本物の馬2頭舞台上を横切り、再度ラダメスが馬に乗って登場です(笑)。登場した馬は興奮せずに落ち着いていて、舞台慣れしているのでしょうか。今回の舞台を見るとコロナの時代に終止符が打たれオペラが完全復活したことを実感しました。

 

公演は期待を裏ぎらず素晴らしいものでした。新国立劇場の空間を最大限に活用した豪華絢爛な舞台、衣装も煌びやかで圧倒されました。モノトーンの色彩も特徴的で、3幕のナイル川の岸辺や4幕の王宮内の広間は印象的でした。2幕の場面転換にはずいぶん時間がかかりカーテンコールまではさんで待たされた一方で、4幕の場面転換はあっという間でした。4幕はどういう仕掛けがあったのか不思議でしたが、幕切れ直前に納得です。神殿の地下は舞台の下に準備されていて、上下していたのです。

カルロ・リッツィ指揮の東京フィルは音楽面でしっかりと舞台を支えていました。躍動感に満ち、繊細さも兼ね備えたハイレベルな音楽づくり。さすが巨匠です。目を楽しませてくれた東京シティ・バレエ団にもブラボーです。そして新国立劇場合唱団は今回も健在。1幕2幕は迫力で迫り、3幕4幕はハーモニーの美しさで圧倒します。

歌手では女性陣が良かったですね。前半の1,2幕はアムネリス一人が支えていたようにも思えましたが、3幕、4幕と聴かせどころでは皆さん本領発揮です。合唱とは無理に張り合うことはせず、聴かせどころの後半に備えていたのでしょうか。アムネリスのアイリーン・ロバーツさんが一番印象に残っています。太くてドラマティックな声で、審判を終えた神官を激しく呪う4幕1場の幕切れの場面では、演技と声の力に圧倒されて鳥肌たちましたね。昔のフィオレンツァ・コッソットを彷彿させます。ブラボーが出ていたのにはびっくりです。久しぶりに聞くブラボーでしたが(叫ぶときはマスク装着するよう指示されていたのですが)。アメリカ人とパンフレットには説明さてれいました。でもどこかエキゾチックな雰囲気が漂います。

アイーダを歌ったセレーナ・ファルノッキアさんはリリックソプラノで、高音の響きが素敵です。透明感ある声は2階席まで届いてきました。3幕のアリアは聞かせてくれました。

ラダメスを歌ったロベルト・アロニカさんは、前半は若干ムラがあったのか2階席まで声が届かない時がありましたが、3幕以降は安定し本領発揮。声は美しく艶やかで迫力もありました。

日本人では、アモナズロを歌った須藤慎吾さん。声に力があって美しい響きが印象に残っています。ランフィスを歌った妻屋秀和さんは貫録十分。1998年の公演以来、ほぼ毎回ランフィス役で出演している大ベテラン。声にも張りがあり、さすが第1人者です。後継者がいないのかなと心配になったりします。

 

期待以上の素晴らしい公演に大満足。今回のアイーダは、4月5日から4月21日まで7回の公演となっています。こういうオペラなら何度でも見てみたいですね。

新国立劇場 ワーグナー「タンホイザー」初日 2023.1.28


昨日は新国立劇場タンホイザーを見てきました。前回のオペラは1年2か月前の新国立劇場。同じワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガーでした。その前が4年前に同じタンホイザー(同じプロダクション)。なんだかワーグナーばかり見ている印象です(笑)。タンホイザーといえば5年以上前のバイエルン国立歌劇場来日公演が強く印象に残っています。現在大活躍中のペトレンコ指揮。タイトルロールはクラウス・フロリアン・フォークト。その感動は今でも鮮明に思い出すことができます。25年以上前のルネ・コロ演じたタンホイザーハンブルグ国立歌劇場来日公演)も記憶に残っています。さて今回はどうでしょうか。久しぶりのオペラ、期待に胸が膨らみます。

 

まずは公園の概要です

  • 【指 揮】アレホ・ペレス
  • 【演 出】ハンス=ペーター・レーマン
  • 管弦楽】東京交響楽団
  • 【バレエ】東京シティ・バレエ団
  • 【領主ヘルマン】妻屋秀和
  • タンホイザー】ステファン・グールド
  • 【ヴォルフラム】デイヴィッド・スタウト
  • 【ヴァルター】鈴木 准
  • 【ビーテロルフ】青山 貴
  • 【ハインリヒ】今尾 滋
  • 【ラインマル】後藤春馬
  • 【エリーザベト】サビーナ・ツヴィラク
  • 【ヴェーヌス】エグレ・シドラウスカイテ

 

ペーター・レーマン演出の新国立タンホイザーは2007年が初演で今回が4回目のプロダクションとなります。2007年の初演は義父と見に行きました。そして前回(3回目)の2019年にも見ているのですが、今一つ印象に残っていないのです。実際に幕が開くと記憶が蘇ってきました。演出は極めて伝統的なもので安心して音楽に専念できます。これでよいのです。参考までに前回の感想を引用しておきます。

2007年の公演は義父と見に行きました。楽劇なのだからもっと舞台に変化を持たせて欲しかったと語っていたのを思い出しました。でもオーソドックスで安心して音楽に集中できるので個人的には不満ありません。ヴェーヌスブルクの映像はちょっとグロテスクかな(失礼)? ~引用終わり~

今回のヴェーヌスブルクの映像は、ヴェーヌスがとても魅力的だったので素敵でした(笑)。

今回は奮発して1回中央の座席(S席)を確保。舞台が目の高さの真正面に見え、歌手の声は正面から直接聞こえてきました。指揮者(アレホ・ペレス)の指揮ぶりも見えます。1幕のバレエも間近で見られて素晴らしかった。今回は新国立劇場専属のバレエ団ではなく、東京シティ・バレエ団だったのです。

オーケストラピットに入ったのは前回と同じ東京交響楽団。超低空飛行というか心配になるほど抑え気味でした。主役の合唱を引き立たせるために脇役に徹したのでしょうか。でもアンサンブルはとても素晴らしく、安心して舞台に専念できました。個人的には、2幕の幕切れなど、もっと音量的なダイナミクスが欲しかったかな。オペラ劇場専属のオーケストラではないので難しいのかもしれません。前回公演の記事を読み返すと昨日と同じ感想が記載されていました。

昨日の主役は新国立唱団でした。いつもながらハーモニーの美しさに心が熱くなります。2幕、3幕と涙が出そうなほど素敵でした。アカペラの合唱はそのまま昇天しそうなほど感動的です。一昨年聞いたニュルンベルクのマイスタージンガーでは、コロナ仕様の演出で、ソーシャルディスタンスを意識して合唱団も疎ら。迫力的に苦しそうでした。一方、今回はコロナ以前の姿に戻って舞台上は密状態(笑)。やはり迫力ありますね。もちろんマスクはしていませんし、前回のように椅子を消毒するようなコロナ期ならではの演出も皆無でした。

さて、タイトルロールのタンホイザーを歌った世界的に活躍中で新国立でもお馴染みのステファン・グールドさん。期待通り、素晴らしく力強い歌唱で苦渋に満ちた3幕のローマ語りは圧巻です。官能の愛と精神の愛の狭間で苦悩し、自暴自棄に陥ったタンホイザーを見事に演じていました。新国立ではジークムントやジークフリートの圧倒的な歌唱が脳裏に焼き付いていますが、あれから5年以上経過してややピークは過ぎたかなという印象。声が太く低音に深みが出てきた一方、高音は少し厳しそうで、やや擦れる場面も散見されました。もともとバリトンに近い声域をもっているので、ドラマティコやヘルデンテノールとしてまだまだ活躍が期待できそうです。

官能の愛の世界の女神を演じたエグレ・シドラウスカイテさんは、タンホイザーを上回る迫力と声量に圧倒されました。リトアニア出身のメゾソプラノ新国立劇場には初登場のようです。

エリザベートを演じたサビーナ・ツヴィラクさんも、容姿、歌声、演技ともに素晴らしかった。艶やかな声がホールいっぱいに響き渡ります。あまりの素晴らしさに圧倒されましたね。スロヴァニア生まれのソプラノで新国立劇場には初登場のようです。

牧童を歌った前川依子さんの透明な歌声にもしびれました。

代役で出演したヴォルフラム役のデイヴィッド・スタウトさんは朗々と歌うタイプ。3幕の夕星の歌はしんみり聞かせてくれました。ただし主役の中では声量的には少し控えめで、3階席まで声が美声が十分に届いたのか若干心配になりました。

領主ヘルマン役の妻屋秀和さんは日本離れした容姿が魅力。歌唱力に加え、最近はますます貫録が増してきましたね・・・

 

感動的なフィナーレの合唱の中、3時間15分のオペラの幕が下りました。久しぶりのオペラを十分に堪能して帰路につきました。

 

幕間の休憩中のロビーの様子。ようやくコロナ前の賑わいが戻ってきました。

 

1階のオープンスペースに展示されていたのはアイーダーの舞台セット。今年は新国立劇場開場25年を迎えます。実は1997~1998年の開場記念で演奏されたゼッフィレッリ演出の豪華絢爛なアイーダは見ていないのです(ローエングリンは見てます)。今回25年周年を記念してアイーダの公演が行われるので4月8日のチケットを会員先行予約でゲットしました。こちらも楽しみです。

 

(おまけ)

京王線の各駅にこのようなポスターが掲示されていました。受験シーズン真っ只中です。

新国立劇場 ニュルンベルクのマイスタージンガー公演 2021.11.28


昨日は新国立劇場ニュルンベルクのマイスタージンガーを見てきました。前回オペラに行ったのはCOVID19が騒がれ始めた2019年の2月のタンホイザー(新国立劇場)。従って2年9ヵ月ぶりとなります。今回の公演は、新国立劇場東京文化会館ザルツブルクイースター音楽祭、ザクセン州立歌劇場の国際共同制作として実現しました。もともと2020年の6月に新国立劇場で上演予定でチケットを購入していたのですがCOVID19のために1年延期となったものです。しかも今年の8月に東京文化会館で予定されていた公演も緊急事態宣言下で直前に中止となり、今回ようやく実現の運びとなりました。

久しぶりのオペラ。しかも大好きなワーグナーということもあって久しぶりの興奮状態です。頭の中を美しいライトモチーフが駆け巡ってしまい昨夜は熟睡できませんでした。今日は休暇を取得して昼過ぎに友部のアパートにに戻り、朝と午後は打合せが入ったりして在宅勤務。でも全く仕事が手に尽きません(汗)・・・

 

久しぶりに訪れる新国立劇場です。COVID19対策として入場前に検温(センサーでチェック)があり、ロビーでの飲食は禁止となっていました。

 

今回の公演は14時開演、30分休憩を2回はさみ、終演時間が20時。約6時間の長丁場のオペラです。実際に幕が引いたのは20時10分過ぎでした。

前にコメントのように、本公演は、新国立劇場東京文化会館ザルツブルクイースター音楽祭、ザクセン州立歌劇場の国際共同制作で上演されます。指揮は新国立劇場芸術監督の大野和士、演出はイェンス=ダニエル・ヘルツォーク、美術はマティス・ナイトハルトです。配役を新国立劇場のHPから以下に引用しておきます。

  • 【ハンス・ザックス】トーマス・ヨハネス・マイヤー
  • 【ファイト・ポーグナー】ギド・イェンティンス
  • 【クンツ・フォーゲルゲザング】村上公太
  • 【コンラート・ナハティガル】与那城 敬
  • 【ジクストゥス・ベックメッサーアドリアン・エレート
  • 【フリッツ・コートナー】青山 貴
  • 【バルタザール・ツォルン】秋谷直之
  • 【ウルリヒ・アイスリンガー】鈴木 准
  • 【アウグスティン・モーザー】菅野 敦
  • 【ヘルマン・オルテル】大沼 徹
  • 【ハンス・シュヴァルツ】長谷川 顯
  • 【ハンス・フォルツ】妻屋秀和
  • 【ヴァルター・フォン・シュトルツィング】シュテファン・フィンケ
  • 【ダーヴィット】伊藤達人
  • 【エーファ】林 正子
  • 【マグダレーネ】山下牧子
  • 【夜警】志村文彦

 

学生時代にオペラの魅力に取りつかれて40年近く経ちます。今まで100回近くはオペラに足を運び、特にワーグナーはお気に入りの作曲家です。でも今回のニュルンベルクのマイスタージンガーは過去に1度しか聴いたことがありません。あまりにも長すぎるのと、公演自体が少ないことが理由です。前回は1988年のバイエルン国立歌劇場の日本公演でした。サヴァリッシュ指揮でベルント・ヴァイクル、ぺーラ・シュライヤ、ルチア・ポップ(数年後に若くして亡くなりました)など錚々たる大歌手たちの歌の競演。それまであまり好みでなかったサヴァリッシュのオペラ指揮者としての本領を垣間見て、それ以来大ファンになったこと、聞きに行った公演は初日ではなかったため、ヘルマン・プライ、ルネ・コロは歌わずに、ダブルキャストの別な方が歌い、その演技に魅了されたことなどを幕が開く前に思い出したりして、久しぶりのオペラへの期待に胸を膨らませていました。

新国立劇場の会員になっているため、先行予約でS席を購入。購入したチケットは1階5列目の左側ブロックです。COVID19対策で前の前方2列は立ち入り禁止となっているため実質前から3列目です。舞台とほぼ同じ高さとなるため、歌手の表情や演出の細部を楽しむことができました。

指揮者の大野和士さんは私とほぼ同年代、ヨーロッパで活躍し2018年に新国立劇場の芸術監督に就任しています。今まで一度も大野さんの生演奏に触れたことはありません。しかもオーケストラは長年音楽監督を務めている東京都交響楽団で、今回とても期待していました。大野さんの作り出すワーグナーは指揮者とオケの一体感があり丁寧に歌わせている印象。ややゆっくりしたテンポで常に抑制が効いた演奏です。ワーグナーの壮大なオーケストレーションを期待している人には物足りなかったかもしれませんが個人的には好きです。

演出は舞台の動きが激しく、しかも細部にわたり凝っていました。舞台中央に回り舞台があって、間近で見ていると頭がくらくらするほど?目まぐるしく回ります。このオペラは各幕に多くの場が存在するので、効率的に場面を作り出していました。回転中にミシミシ軋む音まで聞こえました(笑)。それから、熊さんや豚さんのぬいぐるみが現れたのには驚き。劇中劇?の打ち合わせで、熊さんがぬいぐるみ頭部を脱いでスタッフ?から指示を受けている場面には爆笑。また3匹の子豚は何を象徴しているのでしょう。ラインの乙女? 合唱の皆さんも直立不動は許されず、踊ったりダンスをしながら歌ったりと大忙し。とにかく動きがあります。舞台近くで見ていると、エキストラの皆さんのちょっとした仕草など、細部にわたり工夫が凝らされていました。上下2層の舞台では高さ10m以上もある高所で演じるために螺旋階段を上っていくのです。上で歌ったり演じたりするソリストの方は大変です。高所恐怖症では務まりません。またコロナの時代を感じる選出も目立ちました。手を取り合うことはなく、お互いの手を上下に20~30cm離して踊る姿は何となく滑稽に感じました。エキストラの方が椅子に着席する際にスプレーでアルコール消毒してから布巾でふき取る姿などコミカルに演じられていました。合唱団の方も何となく疎らな印象。舞台上でも極力ソーシャルディスタンスを保ち? 舞台上の人員も心持ち控えめな印象。

今回歌ったソリストの皆さんは、たぶん初めて聴く方ばかり。ハンス・ザックスを歌ったトーマス・ヨハネス・マイヤーが強く印象に残りました。美声、声量、貫禄を兼ね備え、潤いと深みのある声の力で心に訴えかけてきます。一方コミカルな演技で喝采を浴びていたのがベックメッサ―役のアドリアン・エレート。2幕のリュートを抱えた姿にはもう目が点。3幕で痛々しい姿で現れて狼狽して歌う姿やカーテンコールでのギャグ?など演技力が突出していました。声はバリトンでもやや高めの印象ですね。対照的に動きの少ないヴァルター役のシュテファン・フィンケはやや甘めの美声、何となくジークムントみたいな印象(歌い方かな?)。ボーグナー役のギド・イェンティンスは美声を聞かせていました。エーファを歌った日本人の林正子さんも男性陣を相手に魅力的と芯の強さを備えたヒロインを演じていました。もう一人日本人キャストで拍手を送りたいのはダーヴィッドを演じた伊藤達人。急遽代役としてアサインされたようで、演技、歌唱共に大健闘です。まだ若い方のようでこれからの活躍が期待できそうです。カーテンコールでは舞台上で両手をばたばたさせて拍手する姿が可愛らしかった?です。

 

幕間の休憩時間に外に外出してみました

 

隣接する東京オペラシティーのイルミネーション

 

昔と変わっていません

 

再び劇場に戻り、外のラウンジでコーヒー休憩

今回の公演、日本語と英語の字幕が併用されていました。あまりにも距離が近いのでほとんど見ませんでしたが、日本語と英語を比較すると、英訳のほうがシンプルな表現で分かりやすかったです。

1幕の途中でマイスター達が舞台を向いて並んで座っている場面で、数分間館内の照明が点燈され明るくなりました。マイスター達も気になるのか客席の方を振り向いています。あれは何だったのでしょうか。

一方、2幕に登場する夜警がとても明るい照明で客席を照らす場面がありました。予め注意喚起する掲示物を2幕終了後の幕間にロビーで見つけました。

あとは3幕の幕切れ。とっても痛快でした。現代なら許されるでしょう。

 

新国立劇場公演タンホイザー 2019.2.2


今日は新国立劇場タンホイザーを見てきました。タンホイザーと言えば一昨年9月のバイエルン国立歌劇場の来日公演(ペトレンコ指揮、タイトルロールはクラウス・フロリアン・フォークト)での感動が思い出されますが、
さて今回は。。。


オペラというか音楽会自体1年以上のご無沙汰。今回は大奮発してS席(正面17列)。

まずはキャストの紹介です。

指揮:アッシャー・フィッシュ
演出:ハンス=ペーター・レーマン
管弦楽:東京交響楽団
領主ヘルマン:妻屋秀和
タンホイザー:トルステン・ケール
ヴォルフラム:ローマン・トレーケル
ヴァルター:鈴木 准
ビーテロルフ:萩原 潤
ハインリヒ:与儀 巧
ラインマル:大塚博章
エリーザベト:リエネ・キンチャ
ヴェーヌス:アレクサンドラ・ペーターザマー
牧童:吉原圭子



全体的に尻上がりに調子が出てきた印象ですね。このオペラの音楽の構成がそうなっているのかもしれません。
1幕を終わっての感想・・・冒頭のバレエが良かった。でも音楽は平べったすぎ。
2幕を終わって・・・合唱が素晴らしい。こんなに上手かったとは。
3幕を終わって・・・うーん。心に染みるタンホイザー


今日の主役は新国立劇場合唱団とバレエ。特に巡礼の合唱はもう感動的でした。世界に誇れる合唱団です。バレエも素敵でした。演出は2007年の初演と同じ。2007年の公演は義父と見に行きました。楽劇なのだからもっと舞台に変化を持たせて欲しかったと語っていたのを思い出しました。でもオーソドックスで安心して音楽に集中できるので個人的には不満ありません。ヴェーヌスブルクの映像はちょっとグロテスクかな(失礼)?

東京交響楽団は伴奏に徹しているのか小さく纏まりすぎていた印象です(あくまでの個人の主観です)。

タンホイザー役のトルステン・ケールさんは初めて聞きました。世界的なヘルデンテノールとして知られているそうです。美声で音程も外さず洗練された歌い方。演技もうまく良かったのですが、1幕では声量が小さく高音(A以上)が苦しそうでした。年齢かな? 低音で声質が変わりバリトンに近い音域で声量がありました。3幕のローマ語りは最高。ここにピークを持ってきた印象ですね。タンホイザーとヴォルフラムのやりとりはバリトン二人が歌っているように聞こえました。ヴォルフラムのトレーケルさんは「夕星の歌」をしんみり聞かせてくれました。エリーザベトのリエネ・キンチャさんも上手いですね。純潔なエリザベートにピッタリ。ヴェーヌスのアレクサンドラ・ペーターザマーさんは迫力ありすぎ(容姿)。 日本人キャストではヘルマン役の妻屋さんが貫禄。1幕で牧童を歌った吉原さんも声が通り印象に残っています。

久しぶりのオペラ。ワーグナーは最高ですね。







新国立劇場 「神々の黄昏」 2017.10.7


新国立劇場が開場して20周年を迎え、2017/18シーズンはワーグナーの「神々の黄昏」で幕を開けました。3連休初日の本日、初台まで出かけてきました。


劇場内には20周年を祝う幟があちらこちらに掲げられていました。開演は14時。休日の公演ということもあり会場は満席です。

今回のキャストは下記の通りです。

指揮:飯守泰次郎
管弦楽読売日本交響楽団
演出:ゲッツ・フリードリヒ

出演
ジークフリート:ステファン・グールド
ブリュンヒルデ:ペトラ・ラング
アルベリヒ:島村武男
グンター:アントン・ケレミチェフ
ハーゲン:アルベルト・ペーゼンドルファー
グートルーネ:安藤赴美子
ヴァルトラウテ:ヴァルトラウト・マイヤー


開演前にキャストを眺めて驚いたのですが、ヴァルトラウト・マイヤーさんが出演するのですね。懐かしい名前です。ステファン・グールドさんは前回のジークフリートでもタイトルロールを歌っています。期待に胸が膨らみます。しかし6時間は長い・・・

演出は前回に続いてオーソドックス。ゲッツ・フリードリッヒ演出でフィンランド国立歌劇場の協力によって上演されています。奥行きある舞台と光を活用していましたが、先月のタンホイザーに比べると物足りなさを感じてしまいます。

音楽的には読売日本交響楽団が良かった。前回ジークフリートを演奏して感激した東京交響楽団に匹敵しますね。とにかく軽快でテンポよくアンサンブルが素敵です。重厚というよりはやや明るめで深みのある音楽が特徴で、ワーグナーというよりリヒャルト・シュトラウスを聞いているかのような印象。飯守さんの指揮もノリに乗っていて、1幕、2幕共に予定より3~4分早く終わってしまいました。3幕のジークフリートの葬送行進曲以降は特に素晴らしく、劇場全体が息を呑んで音楽に聞き入っていました。

ジークフリート役のステファン・グールドさん、ブリュンヒルデ役のペトラ・ラングさん共に声量タップリで貫禄の演技。期待通り、長丁場のオペラを余裕タップリに歌いきりましたね。奥行き有る舞台の後方で歌うこともあったのですが、2階正面4列目で聞いていても、十分に声が届いてきます。最後のブリュンヒルデの自己犠牲は特に圧巻。物凄いスタミナですね。

舞台を引き締めたのはニーベルング族のハーゲンを演じたアルベルト・ペーゼンドルファーさんです。貫禄タップリで、槍を持ち指輪の奪還を狙う姿は、まるでヴォータンを見ているかのようなど迫力。あれではグンターが気の毒(笑)。父親のアルベリッヒが貧弱に見えてしまいます(笑笑)

日本人が演じた3人のノルンやラインの娘たちは、演技、歌ともに好演でした。グートルーネ役の安藤赴美子さんは歌は素敵ですが、演技が硬い印象をうけました。おっと、忘れていけないのが1幕の後半を引き締めたヴァルトラウテ役のヴァルトラウト・マイヤーさんです。もう60歳を超えているのではないでしょうか。さすがに往年の艶やかで透明感ある響きは影をひそめていますが、随所にその面影を垣間見ることができました。貫禄の演技です。マイヤーさんというとジークリンデやイゾルデの名演を思い出してしまいます。

演出についてはネタばれするのでふれませんが、指輪がとにかく大きい。しかも演技で目立ちすぎ(笑笑)。あと3幕の結末は廃墟で終わってほしかったですね。何でブリュンヒルデが生き返るのだろうか・・・



14時に開演し、45分と35分の休憩を挟み、終演は19時45分過ぎ。飯守さん渾身のワーグナーでした。今年最後のワーグナーになりそうです。ヴァルハラは焼け落ち、指輪はラインに戻り、愛の救済の音楽の余韻が残る中、家路につきました。


1階ロビーに展示されていた生け花。勅使河原茜氏による作品です。

バイエルン国立歌劇場来日公演タンホイザー 2017.9.25


昨日は午後から休暇を取得して、バイエルン国立歌劇場の来日公演を聞きにNHKホールまで出かけてきました。演目はワーグナータンホイザー。次期ベルリンフィルの主席指揮者に抜擢されたキリル・ペトレンコさんが指揮する話題の公演です。





公演の概要です。


タンホイザー』全3幕
指揮:キリル・ペトレンコ
演出:ロメオ・カステルッチ

領主ヘルマン:ゲオルク・ツェッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム・フォン・エッシェンバッハ:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ



指揮者のペトレンコさんは初来日。音楽、オーケストラ、合唱、歌手のアンサンブルが見事です。威圧的にならずにあくまでも優美なワーグナー。艶やかな音色と緻密な音楽作り、特に弦楽器の厚みと響きが素晴らしいですね。ホルンやオーボエも印象に残っています。ステージとピットが一体となり、このような音楽を作り出す凄い指揮者が現れたものです。特に合唱のハーモニーの美しさは感動ものでした。2幕後半、3幕の巡礼の合唱など脳裏に焼きついています。

演出は噂通りでオペラグラスが手放せませんでした(笑)。
弓矢が意味を持っているようです。1幕冒頭にギリシャ神話を思わせる射手達から大きな目に向かって次々と放たれる矢。2幕ではエリザベートの手によって一本の矢がタンホイザーの背に突き刺さります。これは愛の告白?、3幕では舞台の上のほうに突き刺さったまま動きません。一方踊り手のほうは1幕の弓矢から2幕のタイツ姿の演技までは良かったものの、その後は舞台上で何かが慌しく動き、グロテスクな演出にもついていけません。いろいろ象徴的な意味があるようですが2幕後半以降は音楽に引き込まれ演出は気にならなくなりました。色彩的にはシンプルな舞台に溶け込みストーリを邪魔することもなく全く違和感を感じませんでした。
 
歌手ではタンホイザーを歌ったフォークトさんが圧巻でしたね。新国立のローエングリン以来5年ぶりです。豊かな声量、端正は歌いっぷりは変わらず、ヴェーヌスブルクでも羽目を外しません。最後のローマ語りでは、法王の言葉の場面で荒々しい表現も見せて少し変わったなという印象。1幕は控えめでやや音程も外し気味でしたが、2幕、3幕と巨大なNHKホールに美声が響き渡りました。

ヴォルフラムを歌ったゲルネさんはリート歌手らしく、深みと柔らかい歌声が心に響きます。声量はありませんが、2幕の愛の本質の歌合戦はゲルネの勝ちでした。3幕の夕星の歌は美しいアリアですね。エリザベートが苦しみから解放されて天使となっていく場面を歌い上げていました。繊細にヴィブラートを使い、まさに昇天するような歌声でした。

エリザベートのアンネッテ・ダッシュさんは力強く透き通った歌声。容姿も素敵ですね。余裕たっぷりに抑え気味に歌っていた印象です。ヴェーヌスのエレーナ・パンクラトヴァさんは、怪しげな容姿はさておき(笑) 声量タップリ。領主へルマンのツェッペンフェルトさんは端正で張りのある歌声で貫禄の表現でした。さすがバイロイト音楽祭の常連です。

カーテンコールで一番拍手をもらっていたのはペトレンコさんでしたね。。。
それからフォークトさんがプロンプターと握手したのには驚きでした。 

NHKホールでオペラを見たのでは10年ぶりです。前回はベルリン国立歌劇場トリスタンとイゾルデでした。NHKホールでの1階席は多分初めてです(L12列)。舞台間近で歌手の息づかいまで伝わってきます。細かく指示を出すペトレンコさんの指揮ぶりは顔から上が見えました。

ところで、いつもの2階、3階と違って1階前方に座っていると周囲の方々が気になりますね。開幕直前にリュック姿で会場に入り最前列に座り、幕が閉じると同時に拍手もせずに席を立ち去って老人がいました。あれは一体何者?? 
 

新国立劇場 ジークフリート 2017.6.4


昨日、新国立劇場ジークフリートを見てきました。14時開演で終わったのが20時前。さすがに腰が痛くなりました(笑)。観客も体力的に限界なのに、半分以上は舞台で歌いっぱなしのタイトルロール役のステファン・グールドさんのスタミナとパワーに圧倒されました。最後まで豊かな声量で歌いきりました。そしてオケも素晴らしかった。

まずは公演キャストの紹介から。

指揮:飯守泰次郎
演出:ゲッツ・フリードリヒ
管弦楽:東京交響楽団

出演
ジークフリート :ステファン・グールド
ミーメ      :アンドレアス・コンラッド
さすらい人   :グリア・グリムスレイ
アルベリヒ   :トーマス・ガゼリ
ファフナー    :クリスティアン・ヒュープナー
エルダ      :クリスタ・マイヤー
ブリュンヒルデ :リカルダ・メルベート



ジークフリートの公演を見るのはこれが2回目です。前回は14年前のトーキョーリング。準・メルクル指揮でNHK交響楽団がオーケストラピットに入って当時に話題になりました。昨日は東京交響楽団、指揮は飯守泰次郎さんです。前回のワルキューレ(東京フィル)のときも感じたのですが、新国立のワーグナーはオケと歌手と競いあうのではなく、オケは舞台を盛り立てる脇役に徹しています。でも、昨日の公演ではライトモチーフが次々とうねりとなって押し寄せ、それが自然に奏でられていました。圧倒的な音量ではありませんがワーグナーを聞いているという満足感に浸ることができましたね。管がしくじるのでは?とヒヤヒヤしながら聞くのではなく、たとえ音を外しても全く気にならないほど舞台に専念できました。これが飯守さんの目指すワーグナーなのかとおぼろげながら分かってきました。飯守さんも東京交響楽団も満足の演奏ではなかったのではないでしょうか。初日(6月1日)は皇太子殿下がお見えになったとか。昨日はきっと緊張から開放されてのびのびと演奏できたことでしょう。

演出はオーソドックスです。ゲッツ・フリードリッヒ演出でフィンランド国立歌劇場の協力によって上演されています。シンプルですが奥行きある舞台と光をうまく活用していました。2幕の大蛇との決闘や森の小鳥達が出てくる場面は、ディズニーランドにいるかのような錯覚。黄、白、赤、緑と続く森の小鳥達(ソプラノ役)の演出は面白かったです。青の小鳥(バレエダンサー)に導かれてブリュンヒルデの眠る岩山へ向かうところまで。あまり書くとネタばれしますがとても美しい演出でした。小鳥達の容姿の詳細については賛否両論あると思いますが・・・
それからミーメの赤い傘も謎。舞台上でやけに目立ちました。ジークフリートが小鳥の言葉を理解するようになってからのミーメの姿には何となくマッチしていたようにも思えますが演出の意図までは推察できません。

3幕冒頭のさすらい人とエルダの掛け合いは、さすらい人の舞台が上昇して舞台上下に分かれてのやりとり。昨日は1階20列の中央付近で聞いていたので2人の声が十分な迫力で正面から伝わってきましたが、客席の高さによっては声が伝わりにくかったのではないでしょうか。



タイトルロールのステファン・グールドさんは舞台に出ずっぱり。声量タップリで純粋なジークフリートを余裕タップリに演じてました。怖れを知ってからのブリュンヒルデとのやりとりは、それまでとは全く別人のような歌唱でこちらも拍手です。

前半の舞台と音楽を引き締めたのが、さすらい人(ヴォータン)のグリア・グリムスレイさん。ワルキューレに引き続いての新国立出演です。表現力と声量タップリで個人的にはお気に入りのタイプです。ミーメを歌ったアンドレアス・コンラッドさんはまさに役者ですね。声質的には癖がなくミーメ向きではないかもしれませんが、表現力は一番勝っていたように思います。

3幕になって始めて登場した(森の小鳥を除く)エルダを歌ったクリスタ・マイヤさんは迫力満点。さすらい人とのやり取りは音楽的にも素晴らしく、最後は地下に沈んでいきました。

最後に登場したブリュンヒルデのリカルダ・ベルメートさんは、舞台上で長い間寝かされていて、いきなりパワー全開で歌う難役。声質のせいかやや平坦な印象もありますが、もはやワルキューレではない自分の姿を受け止めるまでの心の葛藤、ジークフリートとの会話のすれ違いを表現豊かに歌っていました。声量もあってジークフリートとの掛け合いは白眉でした。

6時間近い長丁場でした。音楽的には前回のワルキューレ以上に充実していた印象です。昨日から頭の中は指環のライトモチーフが頭の中をクルクル回っています。当然睡眠不足です。今週は全く仕事になりませんね(笑)。これがワークナーの音楽の魅力。早く次の神々の黄昏を見たい気分です。


昨日の公演ではアンケートに回答すると粗品(クリップ)がもらえました。